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イラストレーターみやびの漫画館 作品集 - 月の高いところのロゴマーク

第三章 - 赤い星

第三章 - 赤い星の扉絵

―たしか、中島公園の近くなんだけど― と独り言を呟きながら歩く。あっあった、喫茶「赤い星」!  カラン・コロン・カラン・コーン......。玄関の扉の呼び鈴が小気味良く鳴り響く。  店内はさほど広くはなく、カウンター席に七・八人程が座れるくらいの椅子があり、その後側の壁にそってボックス席が五つあるだけだった。全体的な作りが、丸太を利用していて、椅子やテーブルを特別に作ったのかどこか山小屋風で、自然の空気を感じさせる。まるで、北海道の開拓時代もこうであったかのような牧歌的な雰囲気が店内全体を包み込んでいる。  カウンター内にはオーナーらしき人はいず、二・三人のお客さんがカウンター席にいるだけだった。彩子が座ろうかと入口付近で戸惑っていると、カウンター内の奥の部屋に通じるドアがいきなり開いて金髪頭の若い娘が勢い良く店内に飛び出して来た。あやうく彩子にぶつかりそうになるが、彩子は素早く身をかわしたものの、その弾みで右足の足首を少し捻ってしまい、思わずよろけそうになる身体を転ばないように立て直すのに必死だった。 「こらー!桐子。また家の金を持ち出したなぁ。待てー!待つんだ。」  この店のオーナーらしき人が金髪娘の後を追いかけて、息急き切って走りこんで来たが若い娘は早かった。あっという間に玄関のドアを思い切り開けて、一目散に飛び出して行ったのである。 「チッ、逃げ足の速い娘だ。桐子め。フン!」  この店のオーナーは荒い呼吸をしながらドアの向こうを眺めていたが、我に返ったのかカウンター内に戻り、作業を始めた。 彩子はオーナーの顔を見て驚く。あれ、見覚えのある人だと思った。あぁ、長身で栗色のロングヘアの人、この横顔は間違いない。あの雪の日のJRタワーにいた人だ......。彩子は呆然と立ちつくしていると、カウンター席にいるお客さんがオーナーの方を向いて喋りだした。 「島ちゃん、また桐子ちゃんと親子喧嘩かい。今度はどうしたのさ。」 「いや、どうしようもない。お恥ずかしい話でね。金の管理がきちんと出来ていない父親の責任でしてね。ハ・ハ・ハ。」  オーナーの名前は、どうやら"島"というのがこの会話で分かる。  彩子は空いているボックス席に座りながら島の様子を凝視していた。なんとなく島のさっきの言葉が気になっていた。  ―金の管理が...。父親の責任...。というと妻である母親の責任はないのかなぁ― 「お客様、何にいたしましょうか。」  島が、いつの間にか彩子の前に現れ、オーダーを取りに来ていた。彩子は我に返る。あっそうだ、サークルの申込みをしに来ただけだった。そういえば......。まっ、コーヒーの一杯ぐらいは飲んでいくのも悪くはないと思い返し、コーヒーを注文する。  島はテキパキと作業を続ける。コーヒー豆を挽いたり、食器を洗ったり、休む暇もなく動く。時々、カウンターのお客さんと談笑したり、相槌を打ったりして忙しそうだ。コーヒーを待つ間、彩子は考える。いったいこの店のどこが赤い星なのだろう。ただの赤い星か、それとも何か意味があってのものなのか...。確かにカウンターの向こう側の壁の上部に、紺地に赤い色の星が描かれてある額が掲げてあるが、あれは歴史の本で見たことがある。北辰旗だと思う。明治の初期(一八七三年)北海道の開拓使本庁舎が札幌に建設され、その建物の上部にこの北辰旗が立てられた。確か、赤い星は北極星という意味で、開拓使のマークである。 "; bodyExchange($beforeBodyInner); ?>